倉本聰さんが富良野を自らの拠点にしてから、およそ30年になる。「富良野に住み始めたときにね、結局僕は、30年前ですけれども、ちょうどさまざまな人が地方に住むってことを始めたんですよ、作家とかいろんな人がね。でも、なかなかうまくいかなくて。敗退した人が多かったんですよ。ところが僕は、おかげさまでうま〜くとけ込むことができたの。『あんたうまく飛び込んじゃったけど。なんか、コツあったのかい』って周りに言われた」。 実は、倉本さんはまったくそんなコツなど持っていなかった。しかし、あえて言うなら、「富良野の皆さんに迷惑をかけたこと」だと話す。「僕がうまく富良野に住めた理由。それは、地元の人に迷惑かけちゃったことだろうかな、と思うんですよ。普通、迷惑かけまいとするじゃないですか。でも、これが迷惑かけちゃうんですよ(笑)。例えば風呂がないから風呂貸してとか。塾ができたときなんかは、塾生が入る風呂がないから、また風呂貸してくれって頼んで、『しょうがねぇな』って言いながら貸してくれてたわけですね。ところが塾に風呂ができるでしょ。それで借りに行かなくなるわけですよ。すると、あいつらこの頃こねぇ、冷てぇって話になるわけですよ。それでね、やっぱり人ってね、人の役に立つっていうことがひとつの生きがいなんですよ。僕は迷惑かけることによって市民権を得たという気がしますね」妙に壁を作ることなく、そこの生活を誰よりも知っている人の知恵に頼ってみる。「郷に入っては郷に従え」。月並みだが、その言葉をいかに素直に、そして、等身大で実行できるかに、鍵はあるのかもしれない。
まるで引き寄せられるように、富良野に戻ってくるのは、何も富良野塾のOBだけではない。「“北の国から”に出演した連中なんていうのは、竹下景子にしても、蛍(中島朋子)にしてもよく来ますよ、今もって。来たいんですね」。その理由を倉本さんは“不毛”という言葉を使ってこう話す。「地球上で不毛の地っていうと砂漠とかツンドラとかそういうところを想像するでしょ? でも日本の中にも不毛の地というのがあるのをご存じですか? 不毛っていうのは要するに植物が生えないということ。だから、都市がそうでしょ。アスファルトで固めてるから、植物なんか生えない。舗装道路もそうです。あれ、全部不毛の地なんですよね。だから残された土っていうものが我々にとってはすごく恋しくなるわけですよ。恋しいところをみんな求めて来るの。不毛ではない土地に一度住んでしまった人は」。 「北の国から」がヒットしている頃、富良野には観光客がどっと押し寄せた。それを見た富良野市は、車がいっぱい来るだろうから、畑の中の土道をアスファルトで舗装しようと提案したという。「やめてくれって止めましたよ。だって、みんなお客さんは土を踏みたくて来てるんだから、そこを舗装しちゃったら全然意味がないから。そういうことが良かったんだと思います。あまりにも、今不毛の地が増えている。不毛じゃない土地が、不便だとされている。でも、今は不毛じゃない土地を求めてくる人、多いんじゃないかな」。 倉本さんが、水と空気を美しくし、森を本来の姿に戻す活動を行う富良野自然塾をスタートさせた理由。それは不毛じゃない土地を守るためでもある。
「森の時計」から徒歩3分の森の中にぽつりとたたずむ倉本さんプロデュースのバー。石積み造りの店内で、世界の銘酒を飲みながらお芝居の感想などを語り合ってみては。ちなみに、倉本さんがこよなく愛する酒はジャック・ダニエルとのこと。運が良ければ倉本さんと遭遇するかも!? 営業時間19:00〜24:00。
倉本聰スペシャルインタビュー第3弾、富良野自然塾情報、ラベンダースポットなどをお届け。乞うご期待!
6月1日、富良野塾公演「地球、光りなさい!」が幕を開けた。舞台上に配された真っ白の大木セットの間を、9人の登場人物たちが軽やかに動き回る。役者の表情と身のこなし、セリフ回しがそれぞれ強烈な個性を放ち、キャラクター全員が独創的な一面を演じきっている。なかでも、教授の愛称を持つ松田の内股歩きとちょっぴりオカマチックな話し方が面白くて目が釘づけ! 不法滞在のパキスタン人・パキの外国人的な日本語発音がリアルで上手いのなんの。役者同士の掛け合いのテンポが抜群、それゆえに観客の笑いを引き出しつつ心の底から吐き出されたセリフに引き込まれるのだ。また、富良野塾の舞台作品の魅力として特筆される「ストップモーション」はまさに圧巻。その動きを見ていると、なぜかこちらも息を潜めてしまうほど目が離せなくなる。物語の流れと役者の表情、心に届くセリフの数々が、いくつもの層となって客席に押し寄せてくる。 すべて塾生による手作りという舞台セットや衣装の数々が、役者の素朴な横顔を際だたせているのは言うまでもない。そんな裏方の熱意や努力、生身の人間たちがそこにいる舞台の熱きエンディングに感動。歴代も含めた塾生みんなが一点を見つめて突き進んだ集大成を、ぜひ富良野の地を訪れて確かめてほしい。
2人の宇宙人が、UFOの動力であるきれいな水を求めて地球に降り立つ。ところが、地球の水は……。人里離れた山の飯場を舞台に、女性宇宙人と人間たちとのユニークな交流、それぞれの想いが描かれる。50年近くもの間、この作品にこだわり続けた倉本聰渾身の1本。
6月1日(木)〜30日(金) 会場/富良野演劇工場 入場料/3,000円(自由席) 開演時間/19:30 ※15・16日は休演。
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